三聖吸酸図(さんせいきゅうさんず)は、儒教・仏教・道教の代表者が、同じ酢を舐めて「酸っぱい」と顔をしかめる場面を描いた図像です。
三人の組み合わせにはバリエーションがありますが、よく見られるのは:
- 孔子(儒)
- 釈迦(仏)
- 老子(道)
三人がどれほど思想的に異なっていても、「酢は酸っぱい」という事実は同じ。
そこから導かれるのが、東アジア思想の重要概念である 三教一致(儒・仏・道の調和)です。
つまりこの図は、「真理は一つである」という思想を、ユーモラスで親しみやすい形にした寓意画です。
江戸時代には、この「三人が酢を舐める」イメージが転じて、「三杯酢=三位一体の調和」という発想が生まれたようです。
岡倉天心著「茶の本」では、釈迦、孔子、老子が壺の中に入った酢(人生の象徴)を舐めたところ、現実家の孔子はそれを酸っぱいといい、釈迦は苦いといい、老子は甘いといった、とあり、仏教・儒教・道教の三つの教えそれぞれの特徴を浮き彫りにしていると述べている。