冬嶺秀孤松(とうれい こしょう ひいず)は、「冬の山で、他の木々が葉を落とす中、一本の松だけが青々と際立つ」という情景を描いた禅語です。

この句は、東晋の詩人・陶淵明(とうえんめい)の『四時歌(四時の詩)』に由来するとされます。
ただし、別の資料では、画家・顧愷之(こがいし)の長詩から陶淵明が四句を抜き出したものともされています。

四季を五言四句で描いた詩で、冬の部分がこの句です:

  • 春水満四澤
  • 夏雲多奇峰
  • 秋月揚明輝
  • 冬嶺秀孤松

● 不変・不動の精神
冬の厳しさの中でも青々と立つ松は、外界の変化に動じない心、誘惑や煩悩に流されない姿の象徴とされます。

● 孤高の禅者の姿
他の木々が葉を落とす中、一本だけ凛と立つ松は、悟りすらも手放した、無一物の境地にある禅者を思わせると解釈されることもあります。

● 四季の循環を踏まえた深い含意
原典が四季を描く詩であるため、「冬の厳しさの先にまた春が巡る」という循環性も含まれ、人生の節目や困難の時期に掛け軸として好まれます。