山雲海月情(さんうん かいげつのじょう)は、最も端的には、「山の雲、海の月のように、清らかで隔てのない心情を語り尽くすこと」「親しい者同士が胸中の心情を包み隠さず語り合うさま」を意味します。
- 山雲(さんうん):山にたなびく雲
- 海月(かいげつ):海に映る月
- 情(じょう):心情・境地
この句は、禅の公案集『碧巌録』に由来します。
● 馬祖道一と百丈懐海の逸話
馬祖(ばそ)と百丈(ひゃくじょう)が山道を歩いていると、野鴨が飛び立つ。
馬祖が「何だ」と問うと百丈は「野鴨です」と答える。
さらに「どこへ行った」と問われ「飛び去りました」と答える。
そこで馬祖は百丈の鼻をひねり上げ、百丈が痛がるとこう言う。
「どこへ飛び去ったというが、まだここにいるではないか」
このとき百丈は悟りを開いた。
このやり取りを、後世の禅僧・雪竇(せっちょう)が讃えた頌(じゅ)に「話尽山雲海月情」
という句が含まれています。
つまりこれは、
師弟が悟りの境地を隔てなく語り合う、深い心の交流
を象徴する言葉なのです。