この展覧会は、実はまったく別ジャンルに見える二つの展示が、「異国へのあこがれ」という共通テーマで結びついているのが面白いところです。荏原畠山美術館の2026年秋季展として、

  • 異国へのあこがれ ―唐物、島物、古渡り
  • スタンランと猫のジャポニスム ―マネからシャ・ノワール(黒猫)、アール・ヌーヴォーの時代へ

の二展が同時開催されています。

「異国へのあこがれ」

茶の湯は誕生以来「海の外にあるまだ見ぬ異国へのあこがれ」を原動力として発展してきました。その対象は時代によって、

  • 賞揚(権威)
  • 見立て(美学)
  • 地球規模の交易(ロマン)

へと変化したと説明されています。

展示の中心は、

  • 唐物(中国渡来品)
  • 島物(東南アジアなど海外渡来品)
  • 古渡り

といった茶人たちが憧れた名品です。

茶道の視点で見ると、

「なぜこの水指が珍重されたのか」 「なぜ異国の器を茶席に取り合わせたのか」 「利休や遠州以後、人々は何にあこがれたのか」

という歴史が見えてきます。

スタンランと猫のジャポニスム

一方、新館ではフランス側から見た「異国へのあこがれ」がテーマです。

19世紀末のパリでは浮世絵をはじめとする日本美術が大流行し、「ジャポニスム」と呼ばれる文化現象が起こりました。すると西洋ではあまり高く評価されていなかった猫が、近代美術の重要なモチーフとして扱われるようになります。

「シャ・ノワール」の黒猫

スタンランの代表作が

《シャ・ノワールの巡業》

というポスターです。鋭い目をした黒猫の図像は、今日でも「パリ」「アール・ヌーヴォー」を象徴するイメージのひとつとして知られています。 [hatakeyama…museum.org], [rivoli-antiques.com]

この黒猫を見れば、「あ、これ見たことある」と思う人が多いほど有名です。

夏目漱石との意外な接点

面白いことに、スタンランは明治日本にも紹介されており、

『吾輩は猫である』の中にスタンランの名前が登場する

と紹介されています。